ナツノヒ

UNISON SQUARE GARDENについて色々触れちゃうブログです。語彙がないから複合技でお送りしております。

交響曲第Ⅶ番第Ⅲ楽章〜オーケストラを観にいこう〜【MODE MOOD MODE SENTENCE】

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企画はいよいよ終幕へ。最後までお付き合いのほどをよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別にこんな意味が隠されてるとかじゃなくて、こういう情景が見えただけ。

 

もし幻覚だと思うなら、冗談ってことでどうか許して欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハァ…ハァ…!ハァ…ハァ…!

 

季節は夏、太陽が照りつける灼熱の気候のなかで、"僕"は脇目を振ることもなく走り続けている。

 

(時間は…何とか間に合うかな?)

 

体中の酸素はすっかり奪われてしまった。それでも焦る心を抑えながら思考をして、何とか導き出した結論に少し安堵する。

 

せっかくの日曜日なのにすでに体はクタクタ…暑さのせいでじんわりと浮かんでいた汗はいつの間にか滴っていた。

 

ただでさえ急いでいるというのに、やけに信号に引っかかってしまうし、そうなると足を止めざるを得ない。おかけでその度に汗の量が増えていく。

 

こんなに汗をかいてしまうなら、立ち止まってでも拭えば良かった。

 

(余裕を持って着いておくつもりだったはずが…心の準備をしすぎて、肝心の身支度に手間取るなんて、情けなさすぎる!)

 

今日はせっかくの日曜日だが、予報では30℃を超えるらしく、猛暑日熱中症に注意!と心配そうな顔でテレビのお天気キャスターが警鐘を鳴らしていた。

 

その予報に違わず、ジリジリと太陽が照りつける外はまさに灼熱の暑さで、走るだけでイタズラに体力を消耗してしまう。

 

でも、そんなことお構いなしに心は逸って、一刻も早く目的地に向かうことを最優先にして動いてしまう。どんなに疲れても、それを上回る何かに突き動かされているようだった。

 

ペットボトルで水を買っておいて良かった。

 

そうだ、間に合えばタオルと汗拭きシートでこの汗もごまかせるかな?

 

髪の毛はワックスで固めてきたし、風もほぼないので、大きく崩れることはなさそうだ。

 

服はもう色々と諦めて、普段から着ているバンTにしてしまったけど、"僕"の好きなロックバンドのグッズはオシャレで主張しないデザインなのが幸いした。

 

曲がり角を越えると、集合場所まであと数m…よかった、何とか余裕を持って着けそうだ。人影はまだない。

 

"君"は遅れたことを詫びるのかな?そんなの笑い飛ばすくらいの冗談を言いたいけれど、残念ながら練習なしでうまくいく気はしない。

 

身支度を済ませ、そんな思考が頭を巡るなかで、曲がり角から見覚えのある足音が。

 

その瞬間に心臓の早鐘がリズムを刻む、少しだけ上がった息がビートのように放たれる…そして、脳内で駆け巡る様々な思いがまるで管楽器みたいに彩っていく。

 

言葉にすれば、それが歌詞になるのかな。そんな柄にもないことを考えてしまうぐらいに心は高揚感に包まれていた。

 

そう、例えるなら、これはオーケストラ。

 

様々な感情や思いが入り乱れて、"僕"にしか聴こえない演奏が奏でられている。ずっと前から。

 

どうやって"君"に届ければいいのか…まだわからないけど、どうにかして伝わるようにはしたい。

 

その一瞬を奏でるためにどれだけの犠牲が必要なんだろう。

 

今はどれだけ考えても結論は出そうにない。

 

だから、せめて一緒に、

 

 

 

 

 

"オーケストラを観にいこう"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始まりは季節が変わり、寒さも一段と厳しくなった頃だろうか。

 

友人同士でスリーピースバンドを組んでる僕は、コピーしているロックバンドの新曲に悪戦苦闘しており、頭を冷やすために外で一息ついていた。

 

表題曲も良いんだけど、カップリングも前奏からめちゃくちゃカッコ良い。しかも、雪がテーマの曲なので、この時期にやらないのはもったいない気がする。

 

とはいえ、いつも思うけど、この人たちの曲はめちゃくちゃ難しい。

 

あと数年もしたら、一気に有名になっちゃう気はするなぁ…そのときも今ある曲はやってるのかな?

 

何となく直感だけど、このカップリングは10年経っても人気な気がする。人気投票とかあれば、ファンからもダントツで人気になりそう。

 

そんなことを考えながら、ウォークマンで曲を聴いていると、近くの自販機の前にいる人の姿が見えた。ジッと様子を伺うと、何かに手間取っていた。

 

手には缶コーヒーを持っているのが見え、どうやら蓋がうまく開けれないみたいだ。

 

最初は不要な手助けになるのを嫌って、ただ眺めているだけだったが、いつまで経っても開けることは叶わないようだった。

 

このままでは缶コーヒーが冷めてしまう(真冬に冷たいを買う可能性は否定できないが)ので、思わず声をかけてしまう。

 

最初は遠慮がちであったが、せっかくのコーヒーが冷めてしまうことを告げると、少しばかり申し訳なさそうな表情をしながら、缶を差し出してくれた。

 

カチッと良い音がして、プルタブを開けると、それをそのまま相手に渡す。

 

"ありがとうございます!"

 

そんな言葉とともにとびきりの笑顔が返ってくる。

 

お節介じゃなかったことに安堵しながらも、その言葉に少しだけ嬉しくなってしまう。

 

別にお礼を求めているわけではないけど、ストレートに感謝を述べられると悪い気はしない。人の役に立てたのは純粋に気持ちが良いし。

 

何となくだが、言葉づかいから先輩じゃない気はした。おそらく同級生か後輩だろう。

 

お礼を言われて気を良くしたのか、開けれないのに買ったことが気になっていたからなのか…積極的でない自分にしては珍しく話を振った。

 

"コーヒー、好きなの?"

 

その言葉に首を振り、自販機を指差しながら、理由を説明してくれた。

 

どうやらこの寒さで温かいペットボトルが全部売り切れてしまったらしい。

 

そして、しょうがなく缶コーヒーを買ったものの、慣れない缶のカタチに悪戦苦闘してしまったそうだ。

 

確かに缶コーヒーは普通の缶よりもサイズが小さい。見てみると、手もあまり大きくはないようだし、そういうこともあるだろうと何となく納得してしまった。

 

色々と腑に落ちたので、手を止めてしまったことを詫びると、練習を再開するために屋内へと戻る。

 

"おかげで助かりました。ありがとうございます!"

 

振り向きざまに言われた最後の言葉に軽くお辞儀をしながら、その声が頭の中に残り続けた。

 

缶コーヒーに対して諦めず頑張る姿とその真っ直ぐな声がどこか重なったのか…場を去ってからもその記憶が消えることはなかった。

 

 

 

それが"君"との出会い。

 

 

 

それから1週間が経ち、先週と同じように自販機近くで休憩をしていると、見覚えのある人影が。

 

自販機の前で立ち往生している"君"に気づくのに、そこまで時間はかからなかった。

 

どうやらまた何かに悩んでいるらしい。友だちも連れておらず、この寒さで人もほとんどいないので、ただ立ち尽くしている"君"がそこにいるだけ。

 

2回目はさすがにうっとおしいか…?

 

きっと誰も気にしないはずの物事を否定的に捉えるのは"僕"の悪い癖なんだけど、結局好奇心が勝ってしまうので、この思案は意味を成さないことが多い。

 

そう結論づけた頃に、再び"君"に声をかける。

 

"僕"の顔を見たときの安堵したような申し訳なさそうな…その色んな感情が入り混じった表情は忘れられそうにない。

 

"どうしたの?"

 

事情を聞いてみると、ゆっくりと説明してくれた。

 

どうやら前回の出来事がキッカケで缶コーヒーが好きになり、今日も飲みたくなったらしい。

 

けれど、自分で開けることはできないし、買うか買わないのか…ずっと迷っていたとのこと。

 

開ける練習もできるが、部活柄(音楽系とかかな?)…手を怪我するのは望ましくないそう。

 

聞いてしまえば何てことない話なのだが、自分の気持ちと正直に向き合える人は嫌いじゃないし、多少の手助けをしたくなった。

 

自分で良ければ開けることを告げると、"僕"がそう言うことをどこか予測していたように申し訳なさそうな顔をしながら、丁寧にお礼を言う。

 

たったそれだけのやり取り。

 

そんな少しの行動力で繋がった縁のはずなのに、気づけば大きなものになった。

 

"僕"の世界に"君"が現れて、世界はすっかり変わってしまった。

 

まるでコーヒーの味がミルクやシロップでガラッと変わってしまうみたいに。

 

今までたくさんの話をしてきたし、開けてきた缶コーヒーはもはや数えきれないほどに増えた。

 

印象に残っているのは好きな番組の話で、まさかお笑い番組が好きだっていうのは意外だった。

 

さすがにディープなお笑い芸人の名前が出てきたときは焦ったけど、勧められて見たらめちゃくちゃ笑ったので、センスは本物なんだなって驚いた。

 

何だかんだと週一ぐらいは顔を合わせていたので、髪を切ったのも自然とわかってしまう。

 

まあこっちからは言わないし、何なら自己申告してくれるときもあるので、きっとそれは伝わってないだろうけど。

 

でも、まだ一つわかっていないことはある。

 

それをいつか確かめなくちゃいけない。

 

缶コーヒーを開けたときみたいに簡単に行動できれば良いんだけど、それで済むような話であれば、きっと初めからこんなに悩むこともない。

 

僕の気持ちはずっと前からわかっている。

 

声に出せないぐらいにひっそりと芽生え続けているものだけど。

 

ただ、これだけはっきり言える。

 

"君"を目の前にした鼓動の早鐘はまぎれもない事実であるということ。

 

不意にテンションの上がった"君"の顔が近づくたび、それを否応なしに気づかされてしまう。

 

季節が過ぎれば、こうやって"君"とも会えなくなるかもしれない。

 

"今回も少々だけ"

 

少しずつ積み重ねたものが溢れて消えてしまう前に、この思いを何とかカタチにしなくちゃいけない。

 

それがどんな結果になるとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的地に向かうなかで、何気なく"君"から差し出されたガム。

 

爽やかな果物の香りが緊張を少しだけ和らげてくれたけど、その瞬間に少しだけ違う甘い匂いがした。

 

どうやら緊張で気づかなかったみたいだけど、いつも目にする"君"とは少し違うみたいだ。

 

普段話すのが外だからわからないのか、相当余裕がないからなのか…その発見は"僕"を少しだけ特別な気持ちにさせた。

 

瞬間、背後にはびこる薄暗い気持ち。

 

"あのとき偶然出会っただけの大したことのない関係じゃないか"

 

"踏み込んだ瞬間に拒絶されたらどうするんだ"

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、ここまで来て何て意味のない想像をしてしまうのだろう。

 

まだ"僕"は立ち向かう度胸がないのか。

 

だけど、正直怖い。

 

そんな気持ちを抱えながら、不意に横顔を見つめると、何故だか心が落ち着いた。

 

その一瞬が"僕"を現実に引き戻す。

 

ああ、そうだった。別に何か特別な関係になりたくて、"君"といたいんじゃなかった。

 

心も体も安らぐような穏やかな旋律。これが鳴る限りは嫌なことも悲しいことも気にならなくなるんだ。

 

そんな風景は"僕"にとって息を吸って生きるぐらいに当たり前になっていた。

 

そして、息を吐くぐらいに必要なものとなっていた。

 

きっとこの景色にもいつか終わりが来る。だから、そんな幸せを未完成のままにしておけない。

 

背後に迫る黒い気持ちには無理矢理にでも答えを導いて、思考の対象を脳内ではなく現実の"君"へと切り替える。

 

緊張で頭が真っ白になりながら、声をかけたあの日がいつの間にか思い出される。

 

こうして会えるだけで幸せだと思ってたけど、どうもそうではなかったらしい。

 

揺れ動く心のなかで巡る言葉は、どれも好き勝手なことばかり言ってるし、まるで纏まりのない合唱コンクールの練習みたいだ。

 

きっと指揮棒を振っているのは"僕"なんだけど、正しい旋律を読み取ることは簡単じゃなくて、今にも立ち止まってしまいそうだ。

 

でも、現実は待ったをかけてくれないし、これが物語ならとっくに次の章に移る頃合いだ。

 

ほら、今もどこに向かえばいいのかわからない。

 

わからなくても時間は少しずつ進んでいく。

 

もうすぐ目的地に着いてしまう。

 

止まらないし、むしろ段々と強くなっていく。

 

"僕"の"君"に向けた気持ち。

 

わかりやすい言葉で届けられたら、これほど苦労はしないんだろう。

 

それぐらいの自信はあるし、誰だろうと負けないぐらいの気持ちがあることは断言できる。

 

だけど、でも、それでも

 

 

"君"にどうしたら受け取ってもらえるのか?

 

 

どれだけ考えてもその答えだけが出そうにない。

 

 

楽しいという感情だけはどこまでも積み重なっていくのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"君"が隣にいるだけで、気持ちがどんどん膨らんでいって、"僕"の心は高鳴っていく。

 

まるでオーケストラみたいなんだけど、"僕"にはその知識はまるでない。

 

だから、好きなもので例えてみることにした。

 

これがロックバンドのライブだとすれば、セットリスト的にはいつになるんだろうか。

 

まだまだ序盤?バラードタイムの中盤?それともクライマックスの終盤?

 

"僕"だけの話じゃないから、どれだけ考えても結論が出ないんだろうけど。

 

ただ、自分の大好きな音楽はどんなときでも楽しいのは確かで、つまり好きなことはいつでも楽しめるってこと。

 

やっぱりこの気持ちに嘘だけは存在しようがないから。

 

人懐っこく近づく"君"は

 

"僕の気持ちに気づいてるの?"

 

いつの間にか距離は縮まって、気づけばもう10センチ。

 

"君"の穏やかな笑顔をこんな間近で見れる人間は世界にどれだけいるのだろう。

 

自分が特別な気がして、踏み込みたくなるけど、全部が消えてしまいそうで怖い。

 

"今回も少々だけ"

 

この言葉が今日は全然違う意味に聴こえてしまう。

 

"ありがとう"

 

"バイバイ"

 

夜が揺れている帰り道で、"君"のそんな言葉と表情を思い返す。

 

もし明日"君"がいなくなったとしても、きっと世界は何も変わらない。

 

だけど僕にとっては存在が揺らぐほどの出来事だし、きっとそんな地球に住み続けたいとは思わない。

 

大袈裟だけど、揺るぎない"僕"の気持ちだ。

 

だったら、この思いも"君"も消えてしまうのは多分耐えられそうにない。

 

今までも一瞬の出来事の連続だったし、それらが繋がってここまで来た。

 

だから、これからも紡いでいこう。

 

それがいつか素晴らしい結果になると信じて。

 

そうして、僕はまた歌を口ずさむ。

 

脳内に絶え間なく流れるメロディに歌詞をつけて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季節は巡り、春が来て、新しいページをめくる僕らは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 

 

不意に伸ばした手が視界に入る。

 

携帯からなるアラームにハッと目を覚ました。

 

どうやら夢を見ていたらしい。やけにハッキリとして現実的だったが。

 

それにしてもやけに爽やかな内容だったな…けっこう曖昧な部分もあったけど。間違ってもあんな青春は送っていないはず。

 

そもそも学生時代は軽音部じゃなかったし、身近にあんな存在はいなかった。しかも学生時代は7.8年も前の話だぞ…色々と思い残しでもあるのか?

 

どうしてこんなストーリーじみた夢を見たのかはわからないけど、何となく予想はつく。

 

昨日見たライブが最高すぎて、特にお気に入りだった曲を帰ってからもずっと聴いていたからだろう。

 

いやーやっぱりロックバンドのライブはカッコいい。

 

特に今回のアルバムはめちゃめちゃ良い。

 

もしかしたら、バンド史上最高の傑作になるのかもしれない。

 

アルバムだけでも最高なのに、またライブでセットリストが変わると、大化けするんだよな…。

 

また行きたいなぁ。今からチケット取れるだろうか。

 

ちょっとサイトを調べてみよう。

 

おっと、そうこうしてるうちに出発する時間になってしまった。

 

続きは帰ってからにしよう。

 

とりあえず通勤中は昨日好きになった曲を聴いてみようかな。

 

えーっと、確か携帯で聴けたはずだよな。

 

 

あったあった。あ、イヤホン探さないと。

 

しかし、暑い…もうすっかり夏って感じだ。

 

日曜日は30℃を超えるらしいし、暑さ対策は必須かな。

 

…大事な約束もあるし、ちゃんと準備は怠らないようにしなくては

 

とりあえず待ち合わせ場所には早めに行くようにしよう。あんな始まり方見ると心配になってくる。

 

あの夢の結末ってどうなったんだろう?うまくいったのかな?

 

夢とはいえ、せっかくならハッピーエンドの方がいい。

 

うん、きっとそうだろう。

 

………だとしたら、正夢になるといいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わからずやには見えない魔法は、いつでもどこにでもあなたのもとへ。

 

ロックバンドの力を信じていれば、きっと見えるはず。

 

そうやって、魔法を解きほぐす。

 

「MODE MOOD MODE SENTENCE」はいよいよ終幕を迎えます。

 

 

 

 

最後までどうぞよろしくお願いします。