未来か過去、どちらが好きか?
なんて、極端な質問をされたとして、あなたなら何と答えるだろうか。
僕は迷わず未来と答える。
未来は様々な可能性に溢れているから。
選んだ先で何が待っているのかはわからないが、その結果で確かに変わるものがあって、人生にもたらす意味は非常に大きい。
だからこそ、未来をより良いものにしようとする努力や思いが尊いものだと感じられて、僕は好きだ。
過去にこのブログでも触れたことがあるが、日常では人と関わることが中心の仕事をしている。
学生時代に将来の進路を選ぶ場面での決め手は、その人の未来にどれだけ関わることがどうかだった。
過去や現在は大切だと思う。
ただ、人生を振り返ったり、今を重視したりすることに個人的にはあまり価値を感じない。
未来は"希望"だから。
過去や現在も希望があるからこそ、どんな結果でも受け入れることができるんだと考える。
僕の人生にとっての大きな指針。
そして、UNISON SQUARE GARDENというバンドを愛する理由でもある。
そんな彼らが現体制での活動終了を発表した。
さらにドラムの鈴木貴雄の脱退、合わせてバンド活動の休止に入ることも。
それに伴い、現体制でのラストライブ「Sentimental Period」が7/15に開催されることになった。
この発表があったとき、まさか現行の活動がこのようなかたちで終わりを迎えるとは予想できなかったが、これまでロックバンドからたくさんのものを得たと思っているので、あまり後悔のようなものは感じなかった。
ただ現時点では、これからについて不透明な部分が大きかったため、先行きが見えないことについては何とも言えない感情を抱いていた。
そうして訪れた「Sentimental Period」当日…現体制がどのような結末を迎えるのか、まったく想像がつかないままで会場入りした。
普段の活動では一部の例外を除いて行われないであろう大きな会場、おそらくスケジュールの都合でのこの規模による平日開催、慣れない万単位での集団行動…全てがこれまでのロックバンドでほぼあり得なかったことが現実のものとなっていた。
それ自体はあまり気にならなかった。
そうなる背景は理解できるし、スケジュールを何年も前から抑えているはずの音楽業界で、むしろここまでの規模感でライブを開催してくれたことに感謝しなくてはならない。
だからこそ、どんな結末になっても見届ける。
そんな思いで、自分の予定も何とか都合をつけて、今日この会場にいる。
たくさんの人、熱気、遠い先のステージ、落ち着かない心。
受け入れることができても、自分がそれに慣れることができるのかはまた別の話ではある。
様々な要素が入り混じって、今ひとつ気持ちが定まらないまま…いよいよ開演時刻を迎えた。
会場に流れるのは、SE「絵の具」。
この曲もずっと変わらずに使用されてきた。
節目のときだからこそ、いつも以上に特別な意味合いを感じてしまう。
あまりに遠すぎて、彼らがどこにいるかもわからないし、モニターがないとどんな様子なのかも知りようがない。
何となく歯痒い時間だった。
それでも、万感の思いを乗せて、拍手を送る。
今日この日の時間を作ってくれたことに精一杯の感謝を込めて。
そんな緊張と不安の入り混じったなかで…プツッと「絵の具」の音が切れる。
"フレーズボトル・バイバイ!"
軽快なアンサンブルに続けて、聴き馴染みのあるメロディが流れる。
1曲目は「フレーズボトル・バイバイ」…最新アルバム「Ninth Peel」の最後に収録されている曲である。
タイトルに別れを意味する言葉が入っている以上、このライブで披露されるのは必然なのかもしれない。
客席からは歓声が巻き起こる。
ただ僕はといえば…この幕開けに対して違和感が強く残った。
あまりにあっさりに感じてしまって。
セッションや特別なアレンジのないほぼ普段のライブ通りの構成…確かにそれも悪くないが、昨今のUNISON SQUARE GARDENでは当日のライブならではの演出が盛り込まれていた。
それがないストレートな幕開けに少し不意をつかれたこともあるが、何よりも心に来たのは幕開けから"別れ"を意識させられたからだろうか。
"そんじゃ終わり"
"誰かが用意した答えはくだらないのさ"
"忘れられない今日になった!"
ロックバンドがこのライブを発表したとき、当日は別れの要素はもっと潜めて行うものだと思っていた。
何となく湿っぽくなるのは嫌うような気がしていたから。
だから…軽快な曲とはいえ、こんな風に"バイバイ"を全面に押し出されることが予想外だった。
そんな驚きのなかで、流れるように繋がったのは「アナザーワールド」
初期の大名曲であるが、この曲はライブの1曲目に登場することが圧倒的に多い。
以前はそのような構成で、曲を噛み締めるように味わったのをよく覚えている。
それが今回は"別れ"を彷彿とさせるような繋ぎで披露された。
"さよなら、もう行くよ"
最新アルバムのラストから最初のアルバムの1曲目に繋がるのも、過去を振り返るような構成に捉えてしまい、曲の余韻よりも別れの切迫感が先に来てしまって、寂しさが余計に強まっていく。
ライブの定番ナンバーである「オリオンをなぞる」や「カオスが極まる」もどこかフワフワしているような状態で、動く体とは裏腹に心はここにあらずかのように静けさが広がっていた。
極めつけは、序盤の最後に披露された「MR.アンディ」
こちらもインディーズ時代からの定番曲であるが、最近では滅多とない初期の曲が幕開けの締めを担うシーンに否応なくノスタルジーを感じさせられた。
別れとノスタルジー。
それは過去と現在が交わる瞬間でもある。
それは僕がこれまでロックバンドに救われてきた要素と真逆の展開に思えて、どうにも心が受け入れがたい気持ちになっていた。
そんな風に終わりを噛み締めないでくれ。
頼むからこんな後ろ向きな気持ちを吹き飛ばすようにでかい音を鳴らしてくれ。
疾走感のままに僕らの感情なんて置いてけぼりにしてくれ。
嫌だ。
これでもう終わりなの?
ダメだ、行かないで!
こんな風な結末を望んでるわけじゃない。
僕は今日このときに何か特別なものを求めていなかった。
ただ、どうしようもない別れに対して、一区切りをさせて欲しかっただけなんだ。
いつか言っていた。
仮に世界が終わるとしても、決まっているライブはいつも通りにやると。
そんなロックバンドを期待して、これからの未来へ歩くための確かな1歩目にしたかった。
けれども、今の脳内は大半が寂しさで埋まっている。
ステージと会場の距離も相まって、その感情をまったく振り解くことができない。
ああ、今日でいつものロックバンドは観れなくなるのか。
心の彩りは段々と減っていき、気づけば白黒模様のモノクロに近づいていた。
もしかすると今日はこの気持ちのままで終わりを迎えるかもしれない。
そんなあまり考えたくない結末を少しだけ覚悟した。
「最後までよろしく」
そこからの怒涛の展開に対しても、僕の心にあまり変化はなかった。
バンドの多幸感をより跳ね上げた「君の瞳に恋してない」
好きになった頃からの付き合いである「桜のあと(all quartets lead to the?)」
15年間変わらずにライブの強度を上げる「場違いハミングバード」
きっとこれからの道標になり得るだろう「Invisible Sensation」
少しだけ今後に希望を持てるかもしれない「オトノバ中間試験」
誰もが待ち望んでいたはずの「天国と地獄」
怒涛の展開を締める「傍若のカリスマ」
武道館の終盤を彷彿とさせるような7曲連続で畳み掛けるよう構成は、間違いなくUNISON SQUARE GARDENの十八番だろう。
会場のボルテージも格段に上昇しており、熱気は留まることを知らなかった。
でも、それすらある種の儀式的に思えて…。
この現体制最後の場で、余すことなく出し切ろうという気概の表れだとしたら、それもそれでこの先の希望を感じ取れなくなってしまって、ずっと難しい顔をしていた。
"ロックバンドは楽しい"
普段の彼らが掲げていた理念のようなもの。
今みたいな怒涛の展開は、そのエネルギッシュな楽しさの一端を感じ取れる瞬間でもあった。
けれども、僕は楽しさよりも寂しさが先に来てしまった。
そこにいる彼らと絶対に交わらないような…超えられない何かを感じていた。
それが演者と観客の関係性といえばそれまでなんだけど。
ライブの熱に対して、こんな風に消極的な姿勢で受け止めるということは始めての経験でもあって。
少なくともこんなライブが見たかったわけじゃないと強く思ってしまったのは確かだ。
何よりこのような展開は、普段だと終盤の山場で展開されるものであった。
それよりも優先される要素が後半に隠されていることの表れのようで、それが何なのかはあまり考えたくなかった。
"終わりの鐘がなったから 今日はおしまい おしまい さよならよ"
"「また、会おう」って言ったフローリア"
"さよなら さよなら ここからまた始まっていく"
「WINDOW開ける」、「クローバー」、「harmonized finale」…切なさや別れを意識せざるを得ない曲たちが披露されることで、さらに胸は締めつけられるようだった。
「WINDOW開ける」はファンにとって根強い人気を持つ曲であり、いわゆる物好きであるほど披露されると嬉しくなる存在であった。
「クローバー」は初期から大切にされているバラードであり、このような場で演奏されるだけで大きな意味があるようにも感じられた。
何より「harmonized finale」はいつか来る終わりに向けて作られた曲でもあり、今日のライブを象徴する曲と言っても過言ではない。
それらが中盤のブロックに固まって披露されると、やはり僕は変わらずに"終わり"を意識してしまう。
まるで別れの手紙を聞いているかのような気持ちになってしまうのだ。
おそらくこれが他の色々な曲たちに連なって演奏されていれば、ここまでの受け取りにはならなかったのだろう。
未来の希望よりも現在の別れに焦点が当たるのが必然だとしても、ここまで凝縮された切なさの雰囲気が感じてしまうと、申し訳ないが僕には受け入れがたい現実であった。
おそらく、時間的にはもう終盤に入る頃だろう。
現体制では最後となるかもしれないセッションを加えての「さわれない歌」は、少しだけ僕が見たかったロックバンドの姿がそこにあった。
「箱庭ロック・ショー」に切なくなるようなノスタルジーを感じてしまったが、初期の曲が変わらずに終盤の火付け役を担うことに嬉しさを感じた。
「ガリレオのショーケース」の激しさが終わりを意識させたけれど、逆にそれが最後まで見届ける覚悟を持たせてくれた。
そして、聴き慣れたライブセッション。
少しだけ終幕には早いのかもしれないが、もしそうなっても、今日のライブだと驚きはない。
もう何があっても受け止めるつもりだ。
ライブの余韻をたっぷりと感じさせるようなセッションは、やはり切なさを感じさせるけれど、それもタイトル通りに終わりを告げてくれるのかもしれない。
ライブの幕開けと対をなすように、曲名が叫ばれる。
「センチメンタルピリオド!!」
"自転車を飛び乗って空を探したけど 探したけど 雨"
"英雄気取って放物線描いたけど 描いたけど 雨"
このライブのタイトル元となっている「センチメンタルピリオド」は、彼らの最初のアルバム「新世界ノート」に収録されている曲であり、メジャーデビューシングルでもある。
過去の周年ライブである「fun time 724」や「プログラム15th」、「ROCK BAND is fun」でも必ず本編のラストに演奏されてきた。
彼らにとっての節目に披露される曲であり、今回のライブのタイトルにも採用されたことはある種の必然であると思う。
ただ、普段は記念ライブの多幸感のなかで演奏されているが、今回は決して喜びだけが溢れている場ではない。
文字通り感傷的な気持ちに終止符を打つためなのであれば、きっとこの曲が適役だったのだろう。
彼らとの思い出が走馬灯のような駆け巡りながら、間近に迫ると別れを覚悟して、じっくりとこの曲を噛み締めた。
"わかってるよ バイバイ"
最後は盛大なアンサンブルで締めるのかと思いきや、それもいつもよりは控えめな演奏で余韻を残していた。
「あと3曲っ!」
聴き慣れたカウントの雄叫びとともに「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」で会場が熱気でブチ上がった。
「センチメンタルピリオド」でライブが終わらないことは意外だったが、ユニゾンのライブでタイトルを冠した曲で締めないことはザラなので、切ない気持ちで終わらないことにほんの少しだけ安堵した。
さすがに今の精神状態だと体を揺らすくらいしかノレなかったが、この無敵のナンバーのおかげでさっきよりは顔を上げることができた。
そして、もちろん忘れてはならないのが「シュガーソングとビターステップ」
ライブの山場で登場するお約束の展開ではあったが、今日このライブに限ってはそれが特別なものに感じられた。
過去にこんな記事を書いてるくらいには思うところがある曲だが、様々なイレギュラーを感じるこのライブでは、そのいつも通りがありがたかった。
それでも何百回もやっているであろうこの曲が普段通りに聴こえない場面もあって、やはり楽しいだけでいられない空間であったことを再認識させられた。
「UNISON SQUARE GARDENでした」
それでも、今日が終わる。
泣いても笑っても最後の曲だ。
事がここまで来てしまえば、きっと満足のいく結末は見届けられないだろう。
"ロックバンドは楽しい"
僕たちが救われてきたライブは、この瞬間だけ意味が変わっているのかもしれない。
それだけのことが起きたのだから、もしそうだとしても受け入れる覚悟はできている。
たとえ、終わりが前向きなものでなかったり、振り返りがたいものだったとしても。
今日この日に立ち会って、目撃できたことに意義があるのだから。
そう信じることができれば、怖いものは何もない。
ロックバンドを愛する気持ちが変わることはないのだから。
どんな終幕も見届けよう。
もし、心に影を落としたとしても、それすら受け入れて前に進んでみせる。
だって、僕らはロックバンドに救われてきたのだから!
大丈夫、大抵のことではへこたれーーーーー
"敬具 結んでくれ 僕たちが正しくなくても"
ああ、彼らは全部"わかっていた"んだな。
そう思うと、不思議と涙が止まらなかった。
ここで今日のライブの意味をようやく理解できた気がした。
何となくずっと息苦しさを感じていた。
いつも通りにライブを楽しめないもどかしさ。
何を見ても終わりを感じてしまう景色。
カッコよくて楽しいロックバンドをもっと見れたかもしれない未練。
未来に希望を感じ取れない不安。
自分のなかに胸を張って正しいと言える感情はなかった。
何よりもノスタルジーに縋っているのは自分だった。
未来が好きだなんて言いながら、ずっと過去ばかり見ていた。
ロックバンドの愛にかこつけて、子どもみたいにワガママな感情でこの場の全てを受け入れることができなかった。
それを表面的な思いだけ取り繕おうとして、大事なことに何も気づけないままでいた。
何で、いなくなるんだ。
変わらないでいてくれよ。
明日もライブをしてくれよ!!
何てカッコ悪いんだろう。
そんな状態では、何を聴いても耳に入るわけがない。
僕はただロックバンドのいつも通りが壊れるのが怖かったのだ。
でも、言わせてしまった。
それは願いにも近い意思表示に聴こえた。
きっと彼らにとっても、"正しい"ことではないのだろう。
それでも、ロックバンドは今日このときを"結ぶ"。
でないと、先に進まないのだから。
だからこそ、現在のこの状況でライブすることに意味があるのだ。
そう考えたら、何だか泣けてきた。
彼らにそれを言わせてしまった悲しさ。
自分の今日の感情に意味があったことへの嬉しさ。
現実の無情に対する憤り。
改めて未来を進めることへの期待感。
様々な感情が入り混じって、涙が止まらなかった。
"正しくない"ことが答えなら、今は前を向こう。
そうして、俯いていた顔は上がっていた。
涙が落ちることは変わりなかったけれど。
"風なんかは吹いていないのに 君の心に追いついたせいかな"
この「Catch up,latency」は、20周年記念ライブでもまったく同じ手法で幕開けに披露され、"ロックバンドは、正しくない"を形容していた。
あの頃はそれが誇りで、何よりも報われた瞬間で、記念日を見届けることができることがたまらなく嬉しかった。
それが真逆の意味で披露される今日だと意味合いが変わってしまうし、少なくとも前向きな気持ちでいることはできなかった。
けれども、ようやくこのときになって、僕の心はステージ上と重なった気がした。
今日のライブが良かったとは、きっといつまでも言えないと思う。
多分、長年追いかけていた人間の気持ちとしては正しくない。
誰だって、どんなに未練や悔しさが残ったとしても、最後は幸せな気持ちで終えるのが良いに決まってる。
それでも僕は今日この日を幸せな思い出として受け入れないだろう。
その感情が間違いだとは思わない。
現にロックバンドは正しくないままライブをやりきった。
それでも彼らは前に進む。
だからこそ、この気持ちを否定しないままで未来に目を向けることが、何より自分自身への救いになったのかもしれない。
自分の感じたままの思いを紡ぐことが確かな希望になると信じて。
「ラスト!オンドラムスタカオスズキ!!」
最後は正真正銘の現体制最後のドラムソロ。
これに対して、パフォーマンス以上に何か言うのは野暮な気がした。
とにかく満足のいく姿でドラムを叩く姿をただただ見入った。
これだけ力強い演奏を見ることができたのであれば、未来への不安は少しずつでも取り除いていけると思えた。
そして、最後の言葉は文字通りに確かな"火"となって、僕の心を灯した。
この火をいつかまた返せることを信じて…今できる精一杯の力強い拍手で送り出した。
…正直に言えば、まだ心にはポッカリと穴が開いていた。
今日のライブの意味を実感できたとしても、何かが解決できたわけではない。
それでも明日はやってくるし、そこにロックバンドがいないことも変わりない。
ただ、未来へ一歩だけ足を進めることができた。
その事実だけで、あまり不安は感じない。
次はどこへ行こうか?
少なくともそう思えるくらいには。
UNISON SQUARE GARDEN LIVE 2026「Sentimental Period」 セットリスト
1.フレーズボトル・バイバイ
2.アナザーワールド
3.オリオンをなぞる
4.カオスが極まる
5.MR.アンディ
6.君の瞳に恋してない
7.桜のあと(all quartets lead to the?)
8.場違いハミングバード
9.Invisible Sensation
10.オトノバ中間試験
11.天国と地獄
12.傍若のカリスマ
13.WINDOW開ける
14.クローバー
15.harmonized finale
16.セッション〜さわれない歌
17.箱庭ロック・ショー
18.ガリレオのショーケース
19.センチメンタルピリオド
20.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
21.シュガーソングとビターステップ
22.Catch up,latency
23.オンドラムスタカオスズキ
Thank you,ROCK BAND!
and…
SEE YOU NEXT LIVE!!