ナツノヒ

UNISON SQUARE GARDENについて色々触れちゃうブログです。語彙がないから複合技でお送りしております。

USG2024 マスターボリューム(15th style) ライブレポ(妄想)

 

 

 

 

 

 

※このライブレポは妄想です。実際の人物・組織・作品は一切関係ありませんが、作者の重すぎる"マスターボリューム愛"は紛れもなく本物ですので、安心してお読み下さい。できれば怖がらずに読んでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024年1月27日、僕は大阪のとあるライブハウスにいる。

 

UNISON SQUARE GARDENの20周年企画の(存在しない)先陣を切るライブ「USG2024 マスターボリューム(15th style)」に参加するために。

 

この企画は2009年1月28日に発売された2ndシングル「マスターボリューム」が15周年を迎えるにあたって、1月27日に大阪(きっとフラゲ日)、28日に東京の計2ヶ所で開催されるイベントである(関西民にも救いの手を)

 

20周年という記念すべき年になぜスポット浴びることの少ないこのシングルがフィーチャーされたのか…?という疑問は尽きないが(どの口が)、15周年でカップリング投票1位を獲得した「スノウリバース」が収録されていることを考えると決しておかしくはないと納得し(たように無理矢理辻褄を合わせ)、凄まじいであろう倍率を突破してチケットを獲得することができた。

 

 

もちろん開演前は逸る心を抑えることなどできず、ライブが始まるのを今か今かと待ち続けた。

 

心臓は早鐘を鳴らし、どのようなライブになるのかできる限りの想像を巡らせながら、何とか開演の時間まで漕ぎ着ける(何故か妄想を垂れ流してる現在も謎にドキドキしている)

 

いつものようにSE「絵の具(r-r Ver)」が流れ、UNISON SQUARE GARDENがステージに登場すると、客席から溢れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。

 

楽器やスティックを携え、定位置に着くと、フッと前触れなくSEが鳴り止む。

 

静寂の口火を切ったのは、斎藤のノスタルジーを感じさせるギターの音色だった。

 

だが、どこか瑞々しい新しさも垣間見えるような未知の部分もあって…

 

 

"ありし日 kindness 瑣末な言の葉で 悲しくなったよ 風景はモノクロだ"

 

"陰に隠れた 露悪な無象たち 独りよがりで どうしようもないな"

 

 

2024年のライブ1曲目は「あまりに写実的な」…最新シングル「いけないfool logic」のカップリング曲である。

 

(妄想上における)新年1発目のライブかつ企画の趣旨としては意外な選曲ではあるが、活動史上初のバンド名義の曲という背景を考えると、記念年の始まりとしては申し分ないように感じた。

 

何より2023年は演奏されることがなかったので、ライブとしては初披露というのがセットリストの1曲目として大きな意義があるようにも思えた。

 

"あまりに写実的なプロミネンス 振られた賽の目が幸せなはずないか"

 

"自暴自棄じゃ味気ない とすれば事の次第は 何を選ぶかで 決まってしまうよね じゃあ世界は平穏です"

 

また、最新曲なのにどこかバンド初期を思わせるような曲調は「マスターボリューム」との親和性も高く、当時の焦燥感を今もなお醸し出す静かな情熱を内に秘めているようにも思えた。

 

"ありし日kindness そんなのあったかな"

 

切なげなギターの音色に乗せて、余韻をしっかりと感じさせながら、再びの静寂が起こる。

 

UNISON SQUARE GARDENです」

 

客席からの厳かな雰囲気で斎藤が声を出すと、一転して軽やかに鈴木がドラムを鳴らす。

 

"かくして またストーリーははじまる"

 

ストリングスとテンポよいバンド演奏によるメロディが流れ出し、オーディエンスからも喜びの声が舞い上がっていた。

 

「ようこそっ!」

 

斎藤の笑顔が弾けるなかで挨拶が行われた2曲目は「kaleido proud fiesta」…発売から約2年間を経て、バンドの代表曲として切っては切れぬ存在となっており、いつ何時でも聴くものの前を向かせてくれるようなエネルギーが溢れていた。

 

"その願いを叶えようか 歌えkaleido fiesta きれいすぎて忘られないような ような景色になる"

 

節目を迎える「マスターボリューム」の新たなストーリーの始まりでもあり、この曲を愛する者にとっては今日のこの日は願ってもいない場できっと忘れられないような時間となるだろう。

 

そんな幕開けを多幸感たっぷりで歌いあげ、このライブが間違いなく誰かの救いになるような予感を受けた。

 

"祝祭の鐘よ 鳴れ"

 

もはや祝うための準備はできた…そう言わんばかりの歌詞に表情がほころびながらも、最後まで続く幸福に体が狂喜乱舞していく。

 

そんな雰囲気を一転して、斎藤が鋭いギター音で一閃する。

 

今回は装着してるカポタストを外すと(パトベジツアーリスペクト)、馴染みのある前奏が聞こえてきた。

 

3曲目は「カラクリカルカレ」、1stアルバム1曲目であるこの曲は、まさにユニゾンの音楽におけるある種の1ページ目を開けた存在だといっても過言ではない。

 

掻き鳴らす演奏、赤白い不穏な照明、斎藤の不遜な歌声…どれを取っても長年の厚みを感じ、発売から15年近く経過した作品の確かな重みを感じることになった。

 

"超えてゆけよ、空 土台風船みたいなプライド"

 

バイドとしてのキャリアを積み上げた先がどうなったのか…それは今目にしている演奏が何よりの証明になったと思う。

 

間髪入れずの4曲目は「Silent Libre Mirage」…ある種の清涼剤のような役割を果たしてくれるこの曲は、ここまでの重すぎる文脈を整理してくれ、また五臓がロックするように根っこのロックンロールさを感じ取らされる。

 

先ほどの剣呑とした雰囲気から一変した爽やかな照明や演奏が見る者全てを笑顔に変えていった。

 

"純粋さを保たなきゃ 派手にやるフェーズになって ノイズが邪魔になる"

 

どこか力強い歌詞はどこまでも前を向けるようで、意志の強さが未来を切り拓いていく大切さを教えられているようでもあった。

 

"あてのないままに今をかき分ける"

 

あれから約7年…今をかき分けた先に何があるのかはわからない。

 

けれども、この言いようのない爽やかさはロックバンドでなかなかお目にかかれるようなものではなく、見る者をスッキリとした気持ちにさせたのは確かであった。

 

「最後まで自由に楽しんでね!よろしく!!」

 

斎藤の言葉で会場に響き渡るような拍手が広がっていき、1セクション目は終了となった。

 

 

 

 

 

怒涛の展開の余韻を感じつつ、鈴木がゆったりとドラムを叩いていくと、今度は田淵がベースで心地良いメロディラインを披露していく。

 

どこか聴き覚えのあるメロディに体を揺らしていくと、鈴木が段々とその答えに近づくようなリズムを鳴らしていき、そこに斎藤の歌声とギターが加わる。

 

"できるなら 心と体を2つにわけて 君の元へ 繰り返す反実仮想は 悲し虚しで離れ離れ"

 

中盤の幕開けは「きみのもとへ」、昨年のツアーでも披露されたが、そのときとは異なるセクションの1曲目ということで、また違った印象での演奏に観客の心も逸っているかのような歓声に包まれていた。

 

ニゾンの楽曲としても比較的馴染みやすいこの曲はファン人気も厚く、手を挙げる人、叩く人、体を揺らす人など…思い思いの表現でライブを楽しんでいた。

 

僕自身もライブに行くようになった初期から好きな曲なので、直近のライブ(妄想含む)で何度も出会える喜びを噛み締めながら、その感情に身を任せて体を動かしていた。

 

そんな多幸感をさらに跳ね上げるような力強いドラムで雰囲気は一変し、今度は「Nihil Pip Viper」が客席のボルテージをもう一段階引き上げていった。

 

楽曲としては配信シングルという特性上、ライブで前面に出てくる機会は少ないが、これだけ楽しげな曲で心が踊らないわけがないので、ステージも客席も各々のはしゃぎっぷりが鮮明に浮かび上がってくるような明るさを感じさせる空間になっていた。

 

"大事なことはそう 自分で決めようぜ"

 

そんな曲調のなかでも、耳に残るのがこの歌詞。

 

大切なことを自身で決め続けたからこそ、今この何よりも待ち望んだ(妄想の)場所にいる。それが誇らしくなってきた。

 

"1.2.3.4"

 

続け様に鈴木のカウントからライブやフェスですっかりお馴染みとなった曲が披露される。

 

"5.6 The world is fancy!

 

カウントを引き継いだ斎藤がクールな歌声で会場を魅了し、「世界はファンシー」が異質な演奏でオーディエンスの心を鷲掴みにしていく。

 

ライブでは序盤や終盤に登場することが多いため、中盤で披露されるのは久々であり、また違った顔を見せる楽曲にどこか新鮮さも感じた。

 

何よりこのヘンテコなのに心地良いリズムは唯一無二のものであり、否が応でも心が喜びを隠せなくなってしまう。

 

"My fantastic guitar!"

 

いつも通りの斎藤の華麗なギターに目を奪われながら、捲し立てるような早口も歪で完璧な演奏のアンサンブルも、どのタイミングで見ても素晴らしいの一言で形容できてしまうほどの力強さを感じる。

 

"A Fancy is lonely!"

 

そんな終幕から再び鈴木がドラムを鳴らし、斎藤の鋭いギター音が加わり、またライブの雰囲気は一変していく。

 

"何かが変わりそうな夜だ 流れる星にそっとつぶやいた 君の声も聞こえたけれど 今は空に消えてくだけ"

 

8曲目は「何かが変わりそう」、ロックバンド然としたカッコ良さと明るく美しい曲調が混在して調和している有様は、きっとUNISON SQUARE GARDENでしか見ることができない景色なはずである。

 

隠れた人気を持つこの曲だとわかった瞬間に大きな歓声が巻き起こり、どれほど待ち望んでいたのかを実感する場面でもあった(現実でももっとやってくれ)

 

"独りだけど一人じゃない"

 

前曲「世界はファンシー」の歌詞に対する返答を垣間見えるような仕掛けにニヤッとしながらも、最後の後奏でステージの3人が各々好きなように楽曲を掻き鳴らす様が何とも心地良かった。

 

いよいよこのセクションも終わりか…と頭によぎった瞬間に斎藤だけに照明のスポットが当たる。

 

「スノウリバース」

 

斎藤がそう告げると、切なげで鋭いギターの音色が会場中に響き渡る。

 

"午前零時の回帰線 君に手は届かなかった 最後の言葉もあんまり記憶に残ってません"

 

この誰もが既視感を感じるはずなのに、何年も出会っていなかったような感覚は…間違いなく宣言通りの「スノウリバース」であった。

 

今回のメインである「マスターボリューム」のカップリングと知名度の関係上、どこかで登場することは容易に予想することができたが、前半戦の山場の1番良いところで披露されると思っていた人は決して多くなかったように思う。

 

結成当初から音源が存在してる曲であり、「流星行路」と並んで古株的な立ち位置ではあるが、15周年のカップリングツアーを経て洗練された楽曲は、20周年イヤーを迎えた現在でも遜色ないスピード感で演奏されていた。

 

"白い雪が空に舞い上がり君を迎える"

 

"切れ間が光を呼び 白が銀となる 僕の足跡はやっと動き出した"

 

とても10代の頃に書いたとは思えない世界観の歌詞に心奪われながら、次いつ出会えるかもわからないので、噛み締めるようにその音色を、歌詞を、演奏を味わった。

 

最後は極限まで上げたであろうBPMでもアンサンブルを体感し、前半戦最後のセクションは終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

暗転中もドラムの音やギターのチューニング音を聴きながら、一瞬の静寂に近い空間を味わっていく。

 

後半戦に向けた準備もひときしり済んだ後、暗闇のなかで斎藤の美しいギターのメロディが鳴り渡る。

 

 

"誰もが名前を忘れてしまった おもちゃの宝箱"

 

 

久々の登場となったため、すぐには何の曲かわからなかった。

 

だが、確実にこの曲の正体には覚えがある。

 

それは照明が点くと同時に鳴った斎藤のギターで正解に気づいた。

 

(妄想上の)客席にはピンと来ていない人だっている。

 

それはそうだろう…「夕凪、アンサンブル」は相当な年数の彼らを知らないと気づきそうにはない。

 

ライブでの披露は2015年の「プログラムcontinued」ツアー以来だろうか。

 

昨今のライブでは、あまり長いバラードが披露されることはないが、このような企画で登場することで彼らが活動している期間の長さと積み重ねを改めて感じ取ることができる。

 

"午前零時の高気圧と でたらめなサンプルと不可能で 今日も地球はあいまいな時間を 僕らに信じ込ませる"

 

歌詞のワードにも前曲との繋がりを感じさせる構成にグッと来ながらも、冒頭のアレンジも含めて、今日でしか出会うことのない楽曲の新たな一面を余すことなく味わうことができた。

 

ただ、驚きはそれで終わらなくて…

 

"ハァーー夜が揺れている ハァーー僕の手の中で"

 

"春の桜と君が嫌いだよ 一人ぼっちじゃ 空に昇る思いだ"

 

間髪入れずに「夜が揺れている」へと繋がり、客席からは言葉にならない悲鳴が漏れ出ていた。

 

斎藤の振り絞るような歌声と田淵の切ない言葉選び、鈴木の力強いドラムが合わさって、儚さだけでは説明できない揺るぎない強さを持った決意の曲に聞こえてきてしまう。

 

"夏の花火と君が嫌いだよ"

 

"秋の落ち葉と冬の澄んだ空気と君が嫌いだよ"

 

季節の移り変わりを経ても変わらない思いが重なる果ては、どうにもならない悲しげな決意へと結ばれてしまう。

 

"ありがとう"

 

"バイバイ"

 

彼らは何に別れを告げたんだろう?答えは未だ出ないけれど、そんな不穏な空気を掻き消すように鈴木の力強いドラムソロがはじまる。

 

あるときはドラムを盛大に鳴らし、またあるときはシンバルの美しい音色を存分に奏でていき、ときにはスティック同士さえも彼にとっては心地良い音のひとつにすることができる。

 

小気味よいテンポのなかで演奏が続いていき、今度は斎藤がギターの鋭い音色でステージを、客席を、貫いていく。

 

田淵のジャジーなベースソロは低音の耳馴染みの良さを感じさせ、アンサンブルに彩りを加えていった。

 

演奏が頂点に達した瞬間、鈴木が盛大にシンバルにスティックを叩きつけると、洗練された三重奏が鳴り響く。

 

"イエーーーーー!!!!"

 

"気味悪がり出したらキリナシ 点と線は定義定規 手を握ってわかるものが全て 忘れたの?"

 

斎藤の長いブレスによる幕開けで奏でるのは「ラブソングは突然に〜What is the name of that mystery?〜」、シングルが主役のセトリではカップリングも登場頻度は高まるが、ライブとしては珍しいドラムソロからの登場となった。

 

とはいえ、カップリングツアーではアンコールラストを任せられるぐらいのポテンシャルを持っており、その証拠に客席は今日1番と言っても過言ではないほどの熱量に溢れていた。

 

ラブソングと冠する曲とは思えないほどの激しい演奏で進んでいくが、同時に歌詞のお茶目にもクスッと笑わせられる場面も多く、まさにライブで真骨頂を発揮するような楽曲であると思う。

 

"ところでsay I love you! 今生最大のsay I love you! ランキングはとっくに不確実で ああ ちょうどいいじゃん"

 

かと思えば、終盤で急にラブソングさを出してくる振り幅の広さも彼らの魅力であり、タイトル通りの意味合いも忘れずに踏襲してくる。

 

"誰が並んでたって 格が違う お構いなし 僕は君が好きで仕方ない 詳しくはね、解決編で"

 

結論をあえて出さぬいじらしさもユニゾンならではといった感じであるし、来るべき解決編がどのようなものになるかいつもワクワクするのは僕だけではないはずだ。

 

最後は斎藤と鈴木のタメにタメた演奏からの…

 

"What is the name of that mystery?"

 

駆け抜けるようなアンサンブルの後、解決編はすぐさまに訪れることとなった。

 

 

"君の心が必要で 僕の心は執拗だ 全部をひっくり返しちゃうような狂騒をくれよ!"

 

シームレスで続く「いけないfool logic」で再度の歓声をあげるオーディエンスたち。

 

推理ものアニメの主題歌であるこの曲に繋がるということは、ここまでの展開は決して偶然の産物ではないのだろう(その通り)

 

"いけないfool logic 危ない rope walkだって 1000回 10000回 挑戦しない理由はない"

 

"一寸先か闇だなんて 言い出したやつから順番に さよならだ"

 

"最後に笑うのは僕らだろう"

 

壮大なストリングスとともに放たれる前向きな歌詞に心が救われるようでもあり、前曲への確かなアンサーにも捉えられるような気もして、楽曲同士の親和性にも改めて驚かせる瞬間であった。

 

"あてずっぽを繰り返しちゃうように見えてるとしても"

 

"結局僕らが勝利しちゃうから狂想をくれよ!"

 

最後は彼らの歌声が響き渡り、原曲にはない余韻たっぷりのアンサンブルで演奏を締めた。

 

客席からは轟音のような拍手が起こり、素晴らしいライブを見せているメンバーを文字通り賛辞しているようであった。

 

 

 

 

 

 

暗転の間に給水や音出しなどを終えると、鈴木がシンバルの音色を静かに鳴らしていく。

 

ひとしきり鳴り終えると、カウントと同時に激しいセッションが巻き起こり、終盤へとライブは突入していった。

 

セッションにどこか既視感を覚えながらも、3度ほど同じメロディを繰り返したところ、斎藤がギターを掻き鳴らし、再び鈴木が今度は聴き慣れたカウントでドラムを叩いた。

 

この前奏を生のライブで聞くのは久々となるが、音源では何度も何度も聴いてきたから間違えるはずがない。

 

"無謀的展望視感症 もうカウンセリング不発で 診断は"異端"に落ち着いちゃって"

 

終盤の幕開けは「マイノリティ・リポート(darling,I love you)」、滅多とライブで披露されない曲ではあるが、配信ライブ「LIVE(in the)HOUSE 2」で披露したセッションのアレンジを携えて、オーディエンスの期待を超えるようなかたちで登場した。

 

マイナー調のこの曲と「マスターボリューム」の親和性が高いことは言うまでもないが、ある意味では古参的なポジションとなった同曲を愛する者として、何だか励まされた気分になった。

 

メロもサビも演奏の凄まじさに圧倒され、数ある曲のなかでも難易度の高い楽曲を軽々と弾く3人の姿にある種の尊敬の感情を覚えた。

 

"事件は順調永劫進行中だとして 問題はあるかい?"

 

その歌詞通りにライブは進み、矢継ぎ早で「フィクションフリーククライシス」の癖のあるメロディに鳴り渡る。

 

ここまで張り詰めた空気を中和するように"緩さ"を前面に押し出す様は、音楽という文化の自由さを体現しているようで、そんな空間に居合わせていることが何だか嬉しくなった。

 

"「愛が欲しいんだね 」ってそれだけで エンディング向かおうとしてんじゃねぇよ"

 

ライブは楽しい…それだけで答えはいいのかもしれないけれど、中途半端な感情でそれを表現するのは何か違う気がした。

 

"結局世界は僕が救うしかない 手こずります"

 

楽しむなら徹底的に。ふざけるなら最後までふざけきる。覚悟のない人間にヘラヘラする資格はないのだ。

 

"自意識がクライシス 迷子!"

 

世界一意味がありそうでない言葉をひときしり叫んで、僕らは身も心も音楽に曝け出していく。

 

"本編に間に合わなくても 焦らず次の回へ"

 

きっと答えは5分後の自分が教えてくれるだろうから。

 

"1.2.3.4!"

 

"All quartets lead,lead to say la,la,la,la,la,la"

 

"All quartets lead,lead to say la,la,la,la,la,la"

 

"All quartets lead,lead to say la,la,la,la,la,la"

 

"All quartets lead,lead to say la,la,la,la,la,la"

 

いよいよライブの熱量もピークに達するかといった場面での「桜のあと(all quartets lead to the?)」の登場はきっと誰もが喜んでいたはずだ。

 

ロックとポップが混在する有様は、UNISON SQUARE GARDENにしか体現できない楽曲であり、まさにロックバンドの多幸感というべきエネルギーが会場中に満ち満ちていた。

 

"桜が咲いて散った その後で 何が真実なのかは わかるから future melody そう 今は奏でて"

 

"愛が世界救うだなんて 僕は信じてないけど 今 目の前の君が 明日も生きれるくらいには"

 

"あり得ない不条理はふっ蹴飛ばしていけ with喜怒哀楽 余すな 必要ないよ 嘘つき"

 

耳にするだけで生きる力が湧いてくるようであり、20年前も15年前も10年前も一切彼らが変わっていないことに再認識させられた。

 

"All quartets lead,lead to say la,la,la,la,la,la"

 

"All quartets lead,lead to say la,la,la,la,la,la"

 

"All quartets lead,lead to say la,la,la,la,la,la"

 

"All quartets lead,lead to say la,la,la,la,la,la"

 

"La,la,la,la,la,la"

 

そんな多幸感を持ち越したまま、鋭いライブオリジナルのアレンジが鳴り渡り、照明が斎藤1人を照らした瞬間に…本日の主役が現れる。

 

終盤の山場で現れる「マスターボリューム」は、きっとこのライブでしか見ることができないだろう。

 

聞き慣れた前奏、焦燥を掻き立てるような剥き出しのロックンロール、荒削りながらも確かに感じる信念…発売から15年が経過しても、何一つ色褪せぬことなく、この場で表現されていた。

 

"混沌の一言じゃ 全てを片付けられないだろう"

 

きっと普段のライブだと、この状況は異質にしかならないのだろう。

 

だが、今日この日だけは「マスターボリューム」がライブの中心であり、まったく違和感のないシチュエーションに会場のボルテージも一層ヒートアップしているようだった。

 

(妄想を仕立て上げた張本人とはいえ)こんな風に終盤にこの曲と出会うことが夢だったので、僕個人としても喜びはひとしおであった。

 

"北風を無視して 5秒前を信じてみるんだ こんなもんじゃ全然倒れない"

 

真冬にも存在している"健忘症のあじさい"は未だ枯れることなく咲き誇っており、そのキレイさはきった薔薇にも劣ることはないのだろう。

 

"何が正しくて 何が間違っているのか 全部わかんないが、問題ない"

 

"描いていけ 時代の彼方 描いていけ 時代の彼方"

 

突き刺すような斎藤の叫び声とともに、焦燥と自信が入り混じった2024年にしか奏でられないアンサンブルが鳴り響く。

 

最後は盛大に3人が音を鳴らし、余韻たっぷりにメロディが駆け巡る。

 

UNISON SQUARE GARDENでした!!」

 

斎藤が楽曲のイメージそのままの鋭い眼光のままで客席へと声をかける。

 

もうすぐ夢の時間が終わってしまう。

 

けれど、寂しさ以上の充実感がそこにはあった。

 

僕も感動のあまり思わず手を挙げる。

 

「ラスト!」

 

再びの既視感とともに聴き覚えのあるドラム音が耳に入ってきたが、どこかいつもと違うようだった。

 

それもそのはずだ。この曲とまた出会えるとは思うわけないじゃないか。

 

"また当然のように悲しみは今日もやってきて 乗り越えてもすり抜けても 形を変えて 襲いかかってしまう?"

 

"ああ ノイズが舞う東京ジャングル 油断したら迷っちゃいそうだよ"

 

「プログラムcontinued(15th style)」は、あの盛大な15周年イヤーでしかライブでやることはないと思っていたから。

 

だが、考えてみたら、「USG2024 マスターボリューム(15th style)」というタイトルを考えれば、この曲が最後を飾ることは納得の構成であった。

 

"ああ それでもまだちっぽけな夢を見てる 目立たない路地裏で 超新星アクシンデントみたいなこと"

 

"何気ない歌で 何気ない記念日をお祝いしたら"

 

"ああ 気ままに行こうじゃない きっと何にも変わらないけれど 依然continued"

 

きっと次回のライブからは何も変わらない。

 

「マスターボリューム」が披露される機会はそんなに多くはないはずだ。

 

それでも、たまにはこうやってスポットが当たる日があってもいいと思う。

 

世に放たれてから15年…様々な人の心を突き刺したり、救ってきたりしてきたはずなのだから。

 

だからこそ、

 

"今日くらいは祝ってくれないかな!"

 

この歌詞がどこまでも染み渡る。

 

ロックバンドの本質は15年経っても、20年経っても変わることはない。

 

それを証明することができたライブだと思う。

 

"ふざけろ!続けフルカラー きっと大して変わらないけれど 依然continued"

 

最後は彩り豊かなアンサンブルで演奏を締め、ライブ本編は終了を迎えた。

 

「バイバイ!」

 

斎藤の言葉とともに、メンバーが続々と退場していく。

 

それを拍手だったり、歓声をあげたり、手を振ったり…思い思いの方法で観客たちが見送った。

 

 

 

 

 

 

それでも、僕らは満足しきれないようで、もう一回を求めて、手を叩いてしまう。

 

そんな音に応えるように、間髪入れずに3人がステージへと戻ってくる。

 

楽器を手に持ち、入念なチェックを済ませると、斎藤がマイクへと体を向ける。

 

「おまけ」

 

鈴木のドラムを合図に始まったのは、「Phantom Joke」、前触れなく登場する場面はパトベジツアーを彷彿とさせるが、そのときと異なるのは幕開けの1曲目であること。

 

アンコールとはいえ、その唐突感がある意味で僕らの意表をついた。

 

ただ、同期音なしでは最大出力のマイナーキーシングルということで、「マスターボリューム」を踏襲した存在ということを考えれば、こちらも違和感のない選出であるようにも思う。

 

"常識を無に返す引き金を引いてしまうから"

 

"善々悪々も審議不能になる"

 

"大切なフレーズをこぼすな 物語がゴミになる"

 

どこか「マスターボリューム」と共通するような歌詞も見受けられ、発売から約10年の差があっても、大事にしていることは何も変わっていないことを再三認識させられる。

 

"言えそうでよかった 「まだ愛してたい」"

 

きっとこのフレーズが最も今回のライブを言い表すに相応しい歌詞だろう。

 

鋭さと儚さが混在したメロディとともに、再びのアンサンブルが巻き起こり、最後の最大出力の演奏が放たれる。

 

力強い幕引きに客席からも溢れんばかりの拍手が湧き起こり、いよいよライブの本当の終幕を迎える。

 

耳を澄ますと、ライブでしか聴こえないアレンジによるメロディが終わりの余韻を何度で体験させ、一変して爽やかな結末を迎える予感を感じさせた。

 

そして、斎藤がファンならば馴染みのあるメロディを鳴らしていく。

 

"30度を超えた日曜 浮かび始めた汗は そのままにして 走る 間に合いそうかな"

 

アンコールを締めるのは「オーケストラを観にいこう」、本編と一転した美しい旋律を奏でる曲は意外性を感じるかもしれないが、"健忘症のあじさい"が咲き誇るのが真夏であることを考えると、これ以上ない終わり方であるようにも思える。

 

旋律に合わせるようにクリアな歌声で唄う斎藤、楽曲を噛み締めるように笑顔を浮かべながらコーラスを添える田淵、さながら指揮者のこどくスティックを回す鈴木、各々が曲に対して思い思いの表現で堪能しているようでもあった。

 

さながら夏の日差しのようなオレンジの照明がステージを照らし、今日が寒空であることを一切感じさせず、あの夏の日に僕らも居合わせているかのような錯覚も感じさせられた。

 

きっと今年の夏も良い季節になる。

 

そんな予感を密かに抱きながら。

 

"一瞬の連続が最高の楽譜になるように"

 

まるで今日のこの日を表しているような歌詞で締め、最後はオーケストラの旋律をバックに3人がメロディを掻き鳴らす。

 

ヴァイオリンの音色とともに照明も全て落ち、会場が暗闇で覆われることでライブが終わりを迎えたことを知らされる。

 

そんな芸術的な幕引きに客席からは驚嘆する歓声や感動の拍手が止まらなくなる。

 

ステージに明かりが照らされると、メンバーはすでに去った後であり、バックには…

 

"SEE YOU NEXT LIVE!!"

 

「LIVE(on the)SEAT」の終幕を彷彿とさせるような文字が記されていた

 

そんな粋な演出に再びの歓声や拍手が湧き起こり、物好きたちが各々の思いの丈を伝えている様子が印象的であった。

 

きっと今日のライブを忘れることはないだろう(現実でも実現してくれていいんだよ)

 

20周年イヤーは始まったばかりだ。

 

これからどんな狂想や混沌が巻き起こるのか…楽しみでならない。

 

次はどんなライブになるのだろう?

 

何も予測はつかないが、きっと問題はないはすだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

USG2024 マスターボリューム(15th style) セットリスト

 

1.あまりに写実的な

2.kaleido proud fiesta

3.カラクリカルカレ

4.Silent Libre Mirage


5.セッション〜きみのもとへ

6.Nihil Pip Viper

7.世界はファンシー

8.何かが変わりそう

9.スノウリバース


10.夕凪、アンサンブル

11.夜が揺れている

12.ドラムソロ〜ラブソングは突然に〜What is the name of that mystery?〜

13.いけないfool logic


14.セッション〜マイノリティ・リポート(darling,I love you)

15.フィクションフリーククライシス

16.桜のあと(all quartets lead to the?)

17.マスターボリューム

18.プログラムcontinued(15th style)


19.Phantom Joke

20.オーケストラを観にいこう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年は絶対ワンマンで「マスターボリューム」やってくれよな。あわよくば再録してくれよな…ここまで待ったし、それぐらい強欲になっても問題ないはずだろう?頼むよ。

 

 

 

「マスターボリューム」、15周年おめでとうございます。