"描く景色を 気安く壊すな"
僕の人生にとって大切なことを気づかせてくれたこのフレーズは、現在も心の大事なスペースにそっとしまわれている。
他でもないUNISON SQUARE GARDENから教えられた思いを、少しでも誰かに伝わるように書かせてもらいたい。
ただ、わからないならそれはそれで良いのかもしれない。
そのときはざまみろ!って舌を出してみようかな?
・この記事は企画「ワンフレーズレコメンド」の1月19日分のものです。
前日に投稿された、みんてぃあさんの記事はこちら↓
企画の詳細はこちらに↓
このような企画を主催していただいたハグルマルマさんに感謝と敬意と示しつつ、最大限の努力を持って執筆していこうと思います。
今回紹介するフレーズが含まれている曲は「harmonized finale」、UNISON SQUARE GARDENの9thシングル表題曲です。
この曲はUNISON SQUARE GARDENとも縁深いアニメ「TIGER &BUNNY」の劇場版「The Rising」の主題歌でもあり、同シリーズが一旦の区切りを迎えるに当たって制作された楽曲でもあります。
そんな背景もあって、どこか別れや終演を表現しているイメージが強いこの曲ですが、僕が紹介したいのはまた違った部分になります。
それはきっと世の中のアーティストで言語化しているのはユニゾンだけなんじゃないか…と思うぐらいに普段は目を向けないところなのかもしれません。
でも、だからこそ僕の心には強く印象に残ったフレーズでもあります。
一聴では聴き取ることはできない彼らの音楽を自分なり少しずつ紐解かせていただきます。
本題に入る前にユニゾンのタイアップに関する考察を紹介させて欲しいんですが。
ユニゾンがタイアップ作品との親和性が高い曲を作ることは言うまでもないことだと思います。
それらの曲をよくよく聴いてみると、1番は作品に寄り添った歌詞、2番以降はバンドを想いを内包した歌詞になっている傾向が強いと思っていて。
例えば(前者が1番、後者が2番)
"数分で変わる世界なら 誰にだってチャンスはあるだろうね"
"願えばきっと叶うなら 苦労なんて辞書にはないだろうね"
Invisible Sensation/ボールルームへようこそ
"ぐだぐだ言ってるだけじゃ見向きされないのが この街のルール"
"エゴイズム戦線一着逃げ切り 運命なんて所詮は君の手中さ"
"それぞれの理由を胸に僕らは 何度目かの木漏れ日の中で"
"今じゃなきゃ わからない答がある"
春が来てぼくら/3月のライオン
1番がどのようにアニメとシンクロしているのかは割愛するが(よかったら調べてね)、2番はアニメの雰囲気も残しつつもバンドとしての思いを内包しているフレーズが多いような気がしています。
OPEDカットされるのが1番だけという関係上、バンドとしての楽曲の魅力を2番に集約させる方が表現しやすいという側面があるのかもしれません。
UNISON SQUARE GARDENはライブに生きるバンドなので、作品のためだけに作った曲というのは少しだけ違和感がありますし、このような構成も自然な成り行きなのかなと思っています。
タイアップに対しては真摯に向き合いながらも、あくまでロックバンドとしての矜持は忘れない。楽曲からそんな信念が垣間見えるのもユニゾンの魅力のひとつではないでしょうか。
話が少し逸れてしまいましたが、この「harmonized finale」も例に漏れずその傾向がある気がしていて。
"誰かを救いたいとか 君を笑わせたいとか"
"ずっと続けばいいな けど 終わりが近づいてるのもわかるよ"
"さよなら さよなら ここからまた始まっていく"
1番はヒーローや別れを連想させるような歌詞になっているように捉えてしまいます。
それに対して2番は、バンドとしてのどこか等身大の本音のような歌詞が見え隠れしているように思います。
"並行中の問題に悩んでみたり 偽善者を気取っては心を痛めたり 人間なんて皆目そんなもんだよ 僕もそのなかで生きてるんだよ"
"大切な言葉もさ さりげなく乗せていいかな"
UNISON SQUARE GARDENというバンドが大切にしている言葉が紡がれているようで、ファンとしては色んな思いが駆け巡ってしまうのですが、そのなかでも僕が惹かれたのがこのフレーズ。
"立派にキレイに見えるように飾ったら 立派にキレイな答えが出るけれど 大層な虚栄心に満たされる方が怖い"
何だか自分の中にあるモヤモヤと黒ずんだ気持ちが洗い流されていくような…そんなスッキリとした気持ちにさせられました。
世の中で支持されているものって文字通りキレイなものが多いと思うんですよね。
完璧な姿で完璧な振る舞いをする人だったり、SNSとかで充実した生活を載せてる人だったり、仕事で目に見える成果を残している人だったり。
でも、大人になっていけばいくほどに、そんな都合の良いことだけを経験できるほど人生は簡単じゃないことに気づかされてしまう。
世の中は嫌なことや醜いことの方が圧倒的に多くて、誰しもが何かしらの挫折だったり、情けなくなる瞬間だったりを体験しているはず。
世界は自分のために作られていない。知りたくはないけれど、否が応でも気づかされる真実でもある。
それをきっと大っぴらに言う人はいないだろう。あえて人に聞かせるものでもないし。
でも、僕が納得できないのは、逆に隠すために必要以上に良い面を誇張して声高に叫ぶ人が異様に多いこと。
誰だって生きることは真剣だから…自分にとって不都合なこと教えたくないに決まっている。
僕だってそんな生き方を責める気はない。どこかの誰かにとって自分もそうかもしれないから。
けれども、それが真実みたいに扱っている世の中って本当正しいんだろうか?みたいな疑念はずっと頭の中に残り続けていた。
自分や物事を過度に良い様に見せている姿というのは、ひどく自己満足でつまらない存在に思えてしまう。
だって、それは決して確固たる本物ではないし、存在しないものだから。もし良いものだと信じ込めたとしても、その胸に残るのは虚しさだけなんじゃないか。
少なくとも僕は人生が空虚になることにきっと我慢はできない。
けれども、どうにもそう思っている人間はどうやら少数派らしいので。
大多数の人は過程がどうあれ、良いと思われればそれでも構わないみたいだ。
それはそれで他人の感情なので、僕にとやかく言う資格はない。でも何より嫌なのが、その反動で失敗や挫折に対して世の中の嫌悪感が露骨であること。
例えばひどく失敗したことは成功への貴重な経験だと自分が思っていても、それを過剰に拒否する一定数がいるのが僕にとっての現実。
どんなに懇切丁寧に説明しても、失敗の価値は受け入れてもらえないし、逆に建設的な意見ももらうことはできない。
僕にとってはどんなことでも目の前の現実なので、いかに向き合っていくのか…それしか頭にない。
良いことも悪いことも時間がかかってでも甘んじて受け止めたい。そして、それを教訓に今まで以上に満たされた人生を送りたい。
ただ、それだけの願いなのに。
それすら許されない…見栄えや取り繕うことに対して必要以上に執着し、攻撃してくる世の中にずっと辟易していた。
そんな僕にとって先程の歌詞はずっと感じていた収まりの悪さみたいなものにリンクし、自分がどうして今の世界が嫌なのかを言語化してくれたように思いました。
そして、それに続くフレーズに僕の心は救われ、人生にとって何より大切な言葉になっていきました。
"描く景色を 気安く壊すな"
ああ、このバンドはずっと自分たちと向き合ってきたんだな…
そう感じさせるには十二分すぎる言葉でした。
このブログをご覧になっているみなさんには周知の事実かもしれませんが、UNISON SQUARE GARDENは決して順風満帆な道のりを歩んできたわけではありません。
いわゆる闇期…まったく評価されない時期がしばらく続いていました。
自分たちがかっこいいと思っていたことが世の中的に見ればそうではなかった。
活動の根幹である曲たちにも疑惑の目を向けられ、バンドとしての在り方そのものが揺らぐような事態であったことが後のインタビューから伺えます。
その状況を打破したのが序盤でも取り上げた「TIGER&BUNNY」のOPに起用された5thシングル「オリオンをなぞる」であり、これ以降少しずつ認知されるようになり、今では名実ともに実力派ロックバンドとなりました。
ただ、闇期に対する思いは今でも否定的で、あの頃があったから現在がある…みたいな発言はほとんどなかったように思えます。
さらに言えば、その時期に作られた作品はライブ等での立ち位置も決して良くはなく、特に2ndアルバム「JET CO.」に関してはユニゾン(というか田淵)としては珍しく納得のいく曲が作れなかったことを明かし、セットリストにも良くて1.2曲入るぐらいの扱いとなっています。
UNISON SQUARE GARDENは多幸感と無敵感に溢れたロックバンドであるけれど、絶対ではない。
それを改めて感じさせられる話ですが、変に美化するよりよっぽど潔い話だと思います。
ただ逆に言えば、どんな状況でもバンドの歴史に空白がないことも事実であり。
たとえ評価が高くないとしても過去の曲を必ずセットリスト入りさせ、それでも最高のライブを続けている。これも違うことのない現実です。
辛い過去も確かな成功も自分たちが作り出したもので、それをひとつひとつ丁寧に繋ぎ合わせてきたからこそ現在がある。
きっと何を捨ててもこの景色は見ることはできなかっただろうし、誤魔化しなんてしたら絶対に届くことはなかった。
自分たちの人生に向き合い続けた結果の幸福を肌で実感しているからこそ、"描く景色を気安く壊す"ことなんてしない。
そんな揺るぎない自信が垣間見えるからこそ、目の前の現実をありのままに受け入れることの大切さをより実感できるに思います。
それを闇から抜け出すきっかけとなった「TIGER &BUNNY」の主題歌で言い放ったことはとても意義深いことではないでしょうか。
余談ですが、ユニゾンは2021年2月〜3月にツアー「Nomal」を開催しました。
このツアーは「Phantom Joke」のシングルツアーと銘打って開催されましたが、セットリストには何と「JET CO.」の曲が4曲も入りました。
それは裏テーマとして、田淵が「JET CO.」と向き合うことを設定していたから。
結果はあえて触れませんが、バンドとしての過程を台無しにしなかったからこそ、その景色を実現させることができたんだろうと思います。
UNISON SQUARE GARDENは一瞬も飽き足りることなく、人生という挑みがいのある遊び場で自分たちのやりたいことを続けている。
そして、描いた景色の先の"栄光"も"挫折"も均等に幸せな風景を見せてくれた。
そんな彼らを見ていると、自然と周りの評価なんてどうでも良くなってくるし、
自分が好きにやってきた結果が全てなんだ!って声高に叫びたくなってしまう。
これから僕の描く景色はまだどんなものなるかはわからない。
後悔も、挫折も、嫉妬も、憎しみも、きっと望まなくても勝手に描かれていくし、それゆえの言葉にできない悲しみも数多く経験していくんだろう。
けれども、そこで立ち止まることはないし、そんなに簡単に消してしまうのは面白くないから。
悲しみも喜びを引き立てるコントラストみたいに描いて、人生に飽きることなく、自分の信じる道へ進んでいくんだろうと思います。
"今日が今日で進んできますように"
当たり前の今日をひたすらに積み重ねていくことでしか望む景色は見れないんだろう。
未来は自分でしか作れないし、多分作れる。
それは僕がUNISON SQUARE GARDENから"勝手に"教えてもらったもの。
今日も今日とてそんな彼らを追いかけて、人生を歩んでいくんだと思います。
"かくして またストーリーは始まる"
次回のワンフレーズレコメンドは夕奈さん(@0829_calm )です。その才能に用がある。
ワンフレーズレコメンドもいよいよ後半戦に入りました。終わりは名残惜しいですが、明日以降も素晴らしい記事が投稿されるのを震えて待とうと思います。
では…SEE YOU!